「不安」と「不安障がい」は違うもの〜見えない苦しみを理解しよう

就労支援について

はじめに

私たちは日常生活の中で、様々な「不安」を感じることがあります。明日の会議のプレゼン、上司に怒られるかもしれない恐れ、自分や家族の体調への心配…これらは誰もが経験する自然な感情です。

しかし、「不安障がい」を抱える人が感じている不安は、私たちが日常的に経験する不安とは根本的に異なるものです。今日は、その違いについて考えてみたいと思います。

私たちが感じる「普通の不安」

特徴

  • 明確な原因がある:「明日のプレゼンがうまくいくか心配」
  • 一時的なもの:原因が解決されれば不安も消える
  • コントロール可能:深呼吸や準備で軽減できる
  • 日常生活への影響は限定的:不安があっても普通に生活できる

  • 試験前の緊張
  • 初対面の人と会う時のドキドキ
  • 仕事でミスした後の心配
  • 大切な人との別れへの不安

これらの不安は、人間として自然で健康的な反応です。むしろ、適度な不安は私たちが危険を回避し、準備を整えるために必要な感情でもあります。

不安障がいの人が抱える不安

特徴

  • 明確な原因がない場合が多い:「なぜかわからないけど不安」
  • 継続的で強烈:毎日、長時間続く
  • コントロールが困難:理性では「大丈夫」とわかっていても止められない
  • 日常生活に大きな支障:仕事、学校、人間関係に影響する

身体症状を伴うことも

  • 動悸、息切れ
  • 発汗、震え
  • めまい、吐き気
  • 頭痛、肩こり

具体的な違いの例

普通の不安のケース

状況:明日、上司に叱られそうな予感がある

反応

  • 前日の夜は眠りにくい
  • 胃が少し痛む
  • でも朝になれば気持ちを切り替えられる
  • 実際に叱られても、その後は気持ちが楽になる

不安障がいのケース

状況:特に理由はないが、漠然とした不安が続く

反応

  • 毎朝起きた瞬間から不安
  • 「今日は何か悪いことが起きるかも」という恐怖
  • 心臓がバクバクして息が苦しい
  • 理由を説明できないため、周りに理解されない
  • 一日中、この状態が続く

私たちができること

1. 違いを理解する

不安障がいは「気持ちの問題」や「甘え」ではありません。脳の機能に関わる医学的な状態です。

2. 簡単なアドバイスは控える

「考えすぎだよ」「気にしすぎ」といった言葉は、当事者をさらに追い詰めてしまうことがあります。

3. 安心できる環境を作る

  • 急かさない
  • 批判しない
  • その人のペースを尊重する
  • 「いつでも話を聞くよ」という姿勢を示す

4. 専門的な支援を勧める

症状が深刻な場合は、医療機関や専門のカウンセラーへの相談を勧めることも大切です。

当事者の方へ

もしあなたが不安障がいで苦しんでいるなら、一人で抱え込まないでください。

  • あなたの感じている苦しみは本物です
  • 治療や対処法があります
  • 理解してくれる人は必ずいます
  • 少しずつでも、症状は改善できます

おわりに

不安障がいを抱える人の苦しみは、外からは見えにくいものです。だからこそ、私たちが理解を深め、支え合うことが大切です。

「普通の不安」と「不安障がい」の違いを知ることで、困っている人により適切なサポートができるようになります。そして、誰もが安心して生活できる社会を作っていくことができるのです。


一人ひとりの小さな理解が、大きな支えになります。