「被害妄想」という言葉について
医療や支援の現場では「被害妄想」という専門用語を使います。これは精神医学的な症状の一つで、実際には起きていないことを「自分が攻撃されている」と感じてしまう状態を指します。
この記事では、この症状を持つ方への理解を深めたいという思いで書いています。決してご本人を否定したり、責めたりする意図はありません。
普段は穏やかな人が
普段は穏やかで明るい人。
でも、何かの拍子に不安感や怒りがわいてくるようです。
「〇〇さんがにらんでいる」
「〇〇さんがわたしの悪口を言っている」
「通りすがりの人に文句を言われた」
そう訴えられることがあります。
実際には起きていないこと
スタッフも他の利用者さんも、にらんだり悪口を言ったりしていません。
それは確認できています。
でも、ご本人にとっては「確かにそう感じた」現実なんです。
波がやってくるとき
定期的に、その波がやってきます。
特に、新しい利用者さんやスタッフが入ってきたとき。
環境が変わるとき。
そんなときに、不安が高まるのかもしれません。
わたしの対応
そのたびに、わたしはその方に触れます。
肩や腕に、そっと手を置いて。
「〇〇さんは、にらまれたり悪口を言われるようなことは絶対ない!」
「そうでしょ?」
語気を強めて、はっきりと伝えます。
わたしの手の温度感も、一緒に伝えているつもりです。
「あなたは大丈夫」って。
きっと、心か身体が疲れている
きっと、心か身体が疲れているんだと思います。
別のところで嫌なことがあったり。
不安が積み重なっていたり。
それが原因で、被害妄想が出てしまうんだろうなと。
双方のつらさ
謂れのないことで「にらんでいる」「悪口を言った」と言われた側も、もちろんつらいです。
「そんなことしてないのに…」
その気持ちも、よくわかります。
でも、ご本人もつらいんだろうなと思うんです。
見えない敵と戦っている
被害妄想は、ご本人にとっては現実です。
周りには見えない敵と、一人で戦っている。
その恐怖や不安を想像すると、胸が苦しくなります。
「誰も信じてくれない」
「みんなが敵に見える」
そんな世界で生きるのは、どれだけ孤独でしょうか。
支援者としてできること
わたしたちにできるのは、
「あなたは安全だよ」
「あなたは大切な人だよ」
そのメッセージを、何度でも伝え続けることかもしれません。
言葉だけじゃなく、温度で。
触れることで。
存在で。
完璧な対応はできないけれど
正直、毎回うまくいくわけではありません。
どう声をかけたらいいか、わからなくなることもあります。
でも、諦めずに関わり続けること。
それが大事なんじゃないかなと思っています。
言われた側のケアも大切
そして、忘れてはいけないのは、
「にらんでいる」「悪口を言っている」と言われた側のケアです。
「あなたは悪くない」
「あなたの存在が誰かを傷つけているわけじゃない」
そのことも、ちゃんと伝えていきたいです。
最後に
精神疾患の症状としての被害妄想。
これは、誰が悪いわけでもありません。
ご本人も、周りの人も、みんな頑張っています。
だから、お互いを責めずに。
少しずつ、理解し合えたらいいなと思います。
わたしも、まだまだ学びながらです。
一緒に、考えていきましょう。
※この記事は個人の経験と考えをもとに書いています。専門的な医療アドバイスではありませんので、症状が深刻な場合は医療機関に相談してください。また、プライバシー保護のため、詳細は変更しています。

  
  
  
  
