「就労移行支援を使ってみたいけれど、自分は利用できるのかな?」
そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。今日は、就労移行支援の利用条件や対象者について、詳しく分かりやすく説明します。
就労移行支援の基本的な利用条件
年齢条件
18歳以上65歳未満が基本です。
ただし、例外もあります:
- 高校在学中の18歳:卒業が確定していれば利用可能
 - 65歳以上でも:特別な事情がある場合は市町村の判断で利用可能
 
障がいの種類
以下のいずれかに該当する方が対象です:
身体障がい
- 肢体不自由
 - 視覚障がい
 - 聴覚・言語障がい
 - 内部障がい(心臓、腎臓、呼吸器、ぼうこう・直腸、小腸、ヒト免疫不全ウイルス、肝臓機能の障がい)
 
知的障がい
- 軽度から重度まで、程度は問わない
 - 療育手帳の有無は問わない
 
精神障がい
- うつ病
 - 統合失調症
 - 双極性障がい
 - 不安障がい
 - PTSD など
 
発達障がい
- 自閉スペクトラム症
 - ADHD(注意欠如・多動症)
 - 学習障がい
 - その他の発達障がい
 
難病
- 国が指定する難病(約370疾患)
 - 症状の程度は問わない
 
障害者手帳は必須?
手帳がなくても利用可能
よくある誤解ですが、障害者手帳を持っていなくても就労移行支援は利用できます。
手帳の代わりに以下のいずれかがあれば利用可能です:
医師の診断書・意見書
- 精神科医師による診断書
 - 主治医からの意見書
 - 発達障がいの場合は心理検査結果も有効
 
自立支援医療受給者証
- 精神通院医療(精神科の通院)
 - 更生医療(身体障がい者の医療)
 - 育成医療(身体障がい児の医療)
 
その他の証明書
- 特別児童扶養手当証書
 - 障害基礎年金証書
 - 療育手帳(知的障がい)
 
手帳取得のメリット
ただし、障害者手帳があると以下のメリットがあります:
利用手続きがスムーズ
- 手帳があれば障がいの証明が簡単
 - 手続きの時間が短縮される
 
就職時のメリット
- 障害者雇用枠での応募が可能
 - 企業の障害者雇用率にカウントされる
 - 各種支援制度を利用しやすい
 
具体的な対象者の例
利用できる方の例
Aさん(25歳、うつ病)
- 大学卒業後に就職したが、うつ病を発症して退職
 - 精神障害者保健福祉手帳3級を取得
 - 一般企業での再就職を希望
 
Bさん(22歳、発達障がい)
- 特別支援学校を卒業
 - 療育手帳は持っていないが、医師の診断書あり
 - 初めての就職を目指している
 
Cさん(45歳、身体障がい)
- 交通事故で下肢に障がいを負った
 - 身体障害者手帳2級を取得
 - 以前とは違う職種での就職を希望
 
Dさん(30歳、難病)
- クローン病の診断を受けている
 - 特定医療費受給者証を持っている
 - 症状に配慮してもらえる職場で働きたい
 
利用が困難な方の例
年齢が条件に合わない
- 17歳以下の方(高校卒業前)
 - 65歳以上で市町村が認めない方
 
就労意欲がない
- 一般企業で働く意思が全くない方
 - 通所そのものが困難な方
 
他の制度が適している
- すでに安定した就労をしている方
 - 医療的なケアが最優先で必要な方
 
利用前に必要な準備
体調面の準備
基本的な生活リズム
- 週3~4日は外出できる
 - 午前中から活動できる
 - 2~3時間の集中した活動が可能
 
症状の安定
- 主治医との連携ができている
 - 服薬などによる症状のコントロール
 - 急激な症状悪化のリスクが低い
 
意欲面の準備
働くことへの意欲
- 一般企業で働きたいという明確な意思
 - 2年間の訓練に参加する意欲
 - 新しいことに挑戦する気持ち
 
目標の設定
- どんな仕事をしたいかのイメージ
 - いつ頃までに就職したいかの計画
 - 自分の強みや課題の理解
 
利用を断られることはある?
断られる可能性が高いケース
通所が困難
- 週1日程度しか通えない
 - 1時間程度しか活動できない
 - 頻繁な入院や通院が予想される
 
就労意欲の不明確さ
- 家族に勧められただけで本人の意思が薄い
 - 「とりあえず」という動機しかない
 - 一般企業への就職を全く考えていない
 
他の支援がより適している
- 生活訓練が必要なレベル
 - 医療的な治療が最優先
 - 就労継続支援の方が適している状況
 
断られた場合の対処法
段階的なアプローチ
- 自立訓練(生活訓練)から始める
 - 就労継続支援B型で基礎を身につける
 - 準備ができてから就労移行支援を利用
 
相談支援専門員との相談
- 現在の状況を客観的に評価してもらう
 - 適切な支援の順序を検討
 - 複数の事業所の情報を収集
 
事業所によって受け入れ条件が異なる
事業所ごとの特色
IT・事務系に特化した事業所
- パソコンスキルの基礎がある方
 - デスクワークを希望する方
 - 集中力がある程度ある方
 
製造・軽作業系の事業所
- 体力に自信がある方
 - 手先を使った作業が得意な方
 - チームワークを大切にする方
 
サービス業系の事業所
- 人とのコミュニケーションが好きな方
 - 接客に興味がある方
 - 臨機応変な対応ができる方
 
見学・相談で確認すべきポイント
自分の障がい特性への理解
- スタッフは自分の障がいを理解してくれるか
 - 必要な配慮を提供してもらえるか
 - 同じような障がいの方の利用実績があるか
 
訓練内容の適合性
- 自分の希望する職種に関連した訓練があるか
 - 現在のスキルレベルから始められるか
 - 段階的にスキルアップできる仕組みがあるか
 
利用開始までの流れ
1. 相談(1~2週間)
市町村の障害福祉窓口
- 制度の説明を受ける
 - 利用の可能性を相談
 - 必要書類の確認
 
相談支援事業所
- 専門的なアドバイス
 - 適切な事業所の紹介
 - サービス等利用計画案の作成
 
2. 事業所見学・体験(1~2週間)
複数の事業所を見学
- 最低2~3ヶ所は見学
 - 雰囲気や訓練内容を確認
 - 利用者やスタッフの様子を観察
 
体験利用
- 実際に数日間参加してみる
 - 自分に合うかどうか確認
 - 不安な点を解消
 
3. 申請手続き(2~4週間)
必要書類の準備
- 障害者手帳または診断書
 - 所得証明書
 - その他、市町村指定の書類
 
受給者証の交付
- 市町村での審査
 - 支給決定通知書の受け取り
 - 受給者証の交付
 
4. 利用開始
利用契約の締結
- 事業所との契約
 - 個別支援計画の作成
 - 利用開始
 
よくある質問
Q: 精神障がいの診断を受けたばかりでも利用できますか?
A: 診断を受けたばかりでも利用可能ですが、症状が安定してからの利用をお勧めします。主治医と相談して、適切なタイミングを見極めることが大切です。
Q: 働いた経験がなくても大丈夫ですか?
A: 全く問題ありません。就労移行支援は「初めて働く方」も対象としています。基本的なビジネスマナーから教えてもらえます。
Q: 他の障害福祉サービスと同時に利用できますか?
A: 就労移行支援は基本的に単独利用が原則です。ただし、相談支援や地域生活支援事業などは併用可能です。
Q: 利用期間中に体調を崩したらどうなりますか?
A: 一時的な休止は可能です。利用期間も休止期間分は延長されます。無理をせず、スタッフに相談することが大切です。
まとめ
就労移行支援の利用条件と対象者について、重要なポイントをまとめます:
基本的な条件
- 18歳以上65歳未満
 - 障がいがある(種類は問わない)
 - 一般企業での就労を希望している
 
手帳について
- 障害者手帳がなくても利用可能
 - 医師の診断書などがあれば大丈夫
 - 手帳があると手続きはスムーズ
 
大切なのは意欲
- 働きたいという気持ち
 - 2年間の訓練に参加する意欲
 - 新しいことに挑戦する姿勢
 
事業所選びが重要
- 複数の事業所を見学・比較
 - 自分の障がい特性への理解があるか確認
 - 希望する職種に関連した訓練があるか確認
 
もし「自分は利用できるかな?」と迷っているなら、まずは市町村の障害福祉窓口や相談支援事業所に相談してみてください。
あなたの「働きたい」という気持ちがあれば、きっと道は開けるはずです。
※注意事項 この記事の内容には誤りがある可能性があります。実際のサービス利用を検討される際は、お住まいの市役所・区役所の障害福祉担当課や相談支援事業所などで、最新の正確な情報をご確認ください。
就労移行支援という制度が、本当に必要としている方に届くよう、できるだけ分かりやすい情報をお伝えしていきたいと思います。

  
  
  
  
