就労継続支援を辞めたいと思ったら ― 選択肢と考え方

就労支援について

「もう辞めたい…」

就労継続支援を利用していて、そう思うことがあるかもしれません。

人間関係、体調、作業内容、様々な理由で「続けられない」と感じることは、決して珍しいことではありません。

今日は、辞めたいと思った時にできること、考えるべきこと、そして実際の選択肢についてお話しします。

まず知ってほしいこと

「辞めたい」と思うことは自然なこと

就労継続支援を利用していて、「辞めたい」と思うことは、決して恥ずかしいことでも、失敗でもありません。

よくある「辞めたい」理由

  • 人間関係がうまくいかない
  • 作業が自分に合わない
  • 体調が安定しない
  • 通所するのがつらい
  • 工賃・給料に不満がある
  • スタッフとの相性が悪い
  • 他の利用者とトラブルがある
  • やりがいを感じられない

これらは、多くの人が一度は感じる悩みです。

すぐに辞める前に

「辞めたい」と思った時、すぐに辞める前に少し立ち止まってみましょう。

まず確認したいこと

  • 一時的な感情なのか、継続的な思いなのか
  • 解決できる問題なのか、解決が難しい問題なのか
  • 辞めた後の計画はあるか
  • 他に選択肢はないか

辞める前にできること

スタッフに相談する

一番大切なのは、まず相談することです。

「辞めたい」という気持ちを、スタッフに正直に話してみてください。

スタッフに相談するメリット

  • 客観的な意見がもらえる
  • 解決策を一緒に考えてもらえる
  • 自分では気づかなかった選択肢が見つかる
  • 話すだけで気持ちが整理される

「辞めたいと言ったら、引き止められるんじゃないか…」

そんな心配は不要です。良いスタッフなら、あなたの気持ちを尊重してくれるはずです。

通所日数や時間を調整する

いきなり辞めるのではなく、まず調整してみる

調整の例

  • 週5日 → 週3日に減らす
  • 1日5時間 → 1日3時間に短縮する
  • 午前だけ、午後だけの利用にする
  • 特定の作業だけ参加する

ペースを落とすことで、続けられることもあります。

一時的に休む

休むことも一つの選択肢

体調不良や精神的な疲れがある時は、無理をせず休みましょう。

休むメリット

  • 心身のリフレッシュ
  • 冷静に考える時間ができる
  • 本当に辞めたいのか判断できる
  • 距離を置くことで見えることがある

多くの事業所では、1~2ヶ月程度の休止なら、そのまま復帰できます。

作業内容や配置を変える

今の作業が合わないだけかもしれない

変更の例

  • 軽作業 → 事務作業
  • 屋内作業 → 屋外作業
  • 一人作業 → グループ作業
  • 立ち仕事 → 座り仕事

作業内容を変えるだけで、続けられることもあります。

別の事業所に変更する

事業所を変えるという選択肢

同じA型・B型でも、事業所が変われば雰囲気も内容も全く違います。

事業所変更のメリット

  • 新しい環境でやり直せる
  • 自分に合った場所が見つかるかもしれない
  • これまでの経験は無駄にならない

注意点

  • 一度退所してから次を探す必要がある
  • 受給者証の支給決定は継続する
  • 見学・体験をしてから決める

A型・B型・移行支援の切り替え

A型からB型へ

雇用契約がプレッシャーになっている場合

A型の雇用契約による義務が負担なら、B型への切り替えも検討できます。

B型のメリット

  • 出席義務がない
  • 体調に合わせて通える
  • プレッシャーが軽減される

デメリット

  • 工賃が大幅に下がる(月8万円→2万円程度)
  • 雇用保険がなくなる

B型からA型へ

もっと収入が欲しい、働きたい意欲が高まった場合

B型での経験を活かして、A型にステップアップすることもできます。

A型のメリット

  • 収入が増える(月2万円→8万円程度)
  • 雇用契約で働く経験ができる
  • 一般就労への準備になる

条件

  • 週20時間以上働ける体力
  • 定期的な通所が可能
  • 雇用契約を維持できる

就労移行支援への切り替え

一般企業への就職を目指したい場合

就労継続支援から就労移行支援に切り替えて、一般就労を目指すこともできます。

移行支援のメリット

  • 就職に向けた専門的な訓練
  • 企業実習の機会
  • 就職活動のサポート

注意点

  • 期間は原則2年間
  • 収入(工賃・給料)はゼロになる
  • 就職への明確な意欲が必要

完全に辞める場合

辞める理由を整理する

なぜ辞めたいのかを明確にする

  • 体調の問題
  • 人間関係の問題
  • 作業内容の問題
  • 家庭の事情
  • 他にやりたいことがある
  • 一般就労が決まった

理由を明確にすることで、次の選択肢が見えてきます。

辞めた後の計画

辞めた後、どうするのかを考える

選択肢

  1. しばらく休養する
  2. 別の福祉サービスを利用する
  3. 一般就労を目指す
  4. 自宅で過ごす
  5. デイケアなど医療サービスを利用する

計画なしに辞めると、後で困ることもあります。

退所の手続き

スムーズに退所するために

必要な手続き

  • 事業所への退所の申し出(通常1ヶ月前)
  • 退所理由の説明
  • 返却物の確認
  • 最終出席日の確認

市町村への連絡

  • 受給者証の返却または変更
  • 次のサービス利用の相談

辞めた後の生活

収入がなくなることの影響

A型の場合 月8万円の収入がなくなる

B型の場合 月1~3万円の工賃がなくなる

対策

  • 障害基礎年金の受給(該当する場合)
  • 生活保護の相談
  • 家族の支援
  • 他の収入源の確保

社会とのつながり

就労支援は「居場所」でもある

辞めることで失うもの:

  • 定期的な外出の機会
  • 人との交流
  • 生活リズム
  • やりがい

代わりの居場所を見つける

  • 地域活動支援センター
  • デイケア
  • 趣味のサークル
  • ボランティア活動

孤立しないために

一人で抱え込まないことが大切

相談先

  • 市町村の障害福祉窓口
  • 相談支援事業所
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 保健師
  • 主治医

辞めないで続けた方がいいケース

一時的な感情の場合

「今日は嫌だった」が「ずっと嫌」とは限らない

  • 一時的なトラブル
  • 体調不良による気持ちの落ち込み
  • 疲れからくる感情

数日、数週間で気持ちが変わることもあります。

他に行く場所がない場合

辞めた後の居場所がない

家に閉じこもってしまうくらいなら、多少の不満があっても通い続ける方が良いこともあります。

経済的に困窮する場合

収入がなくなると生活できない

特にA型の場合、月8万円の収入は大きいです。次の収入源の目処が立たない場合は、慎重に検討しましょう。

辞めた方がいいケース

心身の健康を害している場合

無理をして続けることで悪化している

  • うつ症状が悪化している
  • 睡眠障害が出ている
  • 体調を崩し続けている
  • 自傷行為や希死念慮がある

健康が最優先です。

ハラスメントがある場合

我慢する必要はない

  • スタッフからの暴言・暴力
  • 他の利用者からのいじめ
  • セクシャルハラスメント
  • パワーハラスメント

すぐに相談し、改善されないなら退所を検討してください。

明確な次のステップがある場合

前向きな理由で辞める

  • 一般企業への就職が決まった
  • 就労移行支援に切り替える
  • 進学や資格取得のため
  • 家業を手伝うため

次のステップがあるなら、自信を持って進みましょう。

よくある質問

Q: 辞めたら再び利用することはできますか?

A: 可能です。一度辞めても、また受給者証を申請して利用を再開できます。同じ事業所でも、別の事業所でも構いません。

Q: 辞める時に理由を詳しく言わないといけませんか?

A: 詳細な理由を言う義務はありません。「一身上の都合」でも構いませんが、正直に話すことで改善策が見つかることもあります。

Q: 急に辞めることはできますか?

A: 緊急の事情があれば可能ですが、通常は1ヶ月前に申し出るのがマナーです。円満に退所する方が、後々のためにも良いでしょう。

Q: 辞めたことで就職に不利になりませんか?

A: なりません。短期間で何度も転々としている場合は説明が必要ですが、自分に合った場所を探すための変更は問題ありません。

まとめ

就労継続支援を辞めたいと思った時、大切なポイントをまとめます:

すぐに辞める前に

  • まずスタッフに相談する
  • 通所日数や時間の調整を検討
  • 一時的に休むことも選択肢
  • 作業内容の変更ができないか相談

他の選択肢

  • 別の事業所への変更
  • A型⇔B型の切り替え
  • 就労移行支援への切り替え

完全に辞める場合

  • 辞めた後の計画を立てる
  • 収入面の影響を考える
  • 居場所を失わないよう対策
  • 孤立しないよう相談先を確保

健康が最優先

  • 心身を害しているなら無理をしない
  • ハラスメントには毅然と対応
  • 一人で抱え込まず相談する

「辞めたい」という気持ちは、決して恥ずかしいことではありません。

大切なのは、その気持ちと向き合い、自分にとって一番良い選択をすることです。

一人で悩まず、まずは誰かに相談してみてください。

きっと、あなたに合った道が見つかるはずです。


※注意事項 この記事の内容には誤りがある可能性があります。実際の退所や制度利用を検討される際は、お住まいの市役所・区役所の障害福祉担当課や相談支援事業所などで、最新の正確な情報をご確認ください。


就労支援の現場で働く中で、「辞めたい」と悩む方を何度も見てきました。その気持ちに寄り添いながら、最善の選択ができるようサポートしていきたいと思います。