利用者さん同士の関係を見ていて、もどかしさを感じることがあります。
今日は、そんな出来事について書いてみようと思います。
いつもは仲良しの二人
AさんとBさんは、いつも仲良くしています。
一緒に休憩したり、お昼を食べたり。
見ていて微笑ましい関係です。
でも、時々Aさんが、Bさんを避けることがあります。
気を遣うBさん
Bさんは、それに気づいています。
「今は一人でいたいのかな」
「話しかけてほしくないのかな」
そう考えて、そっとしてあげています。
挨拶はちゃんとする。
相手から話しかけられたら、快く返事をする。
でも、自分からは話しかけない。
Bさんなりの、優しさです。
Aさんの不満
ところが最近、Aさんがこう言ってきました。
「Bさんが全然話しかけてくれない」
「私、嫌われているのかな」
え?と思いました。
避けていたのは、Aさんの方なのに。
伝えても伝わらない
私は説明しました。
「Bさんは、あなたが一人でいたい時だと思って、気を遣って距離を取ってくれているんだよ」
でも、伝わらない。
「そんなことない」
「私は嫌われているんだ」
Aさんは、自分の解釈から動きません。
言いたくなる言葉
正直、言ってしまいそうになります。
「あなたが避けるからでしょ!」
「相手はすごく気を遣って距離を取ってくれているのに!」
でも、それを言ったら終わりです。
Aさんを責めることになるし、関係はもっと悪くなる。
だから、ぐっと飲み込みます。
自分が見えない
Aさんには、自分の行動が見えていません。
自分が避けていること。
相手が距離を取っているのは、自分への配慮だということ。
それが、まったく見えていない。
見えているのは、「相手が話しかけてくれない」という結果だけ。
そして、「嫌われている」という解釈。
相手の優しさに気づかない
Bさんの気遣いが、Aさんには伝わっていません。
むしろ、逆に受け取られています。
「そっとしておいてくれている」が、「冷たくされている」に。
「配慮してくれている」が、「嫌われている」に。
優しさが、誤解されてしまう。
これは、本当に切ないことです。
支援者のジレンマ
私たち支援者は、どうすればいいのでしょうか。
Aさんに、自分の行動を気づかせるべきか。
「あなたが避けているから、相手が配慮しているんだよ」と、はっきり言うべきか。
でも、それでAさんが傷ついたら?
自己否定につながったら?
Bさんに、「もっと話しかけてあげて」と頼むべきか。
でも、それはBさんの優しさを否定することにならないか。
難しいです。
客観視の難しさ
人は、自分のことを客観的に見るのが苦手です。
特に、人間関係においては。
自分がどう振る舞っているか。
それが相手にどう映っているか。
それを正確に把握するのは、とても難しい。
Aさんだけではありません。
私たちも、日々そうなのかもしれません。
伝え方を工夫する
今回、私は違うアプローチを試してみました。
Aさんに直接言うのではなく、別の角度から。
「Aさん、最近Bさんと話したい気分?」
「うん、話したい」
「じゃあ、自分から話しかけてみたら?」
「えっ、でも…」
「Bさんは、あなたが話しかけてくれたら、嬉しいと思うよ」
少しずつ、Aさん自身に気づいてもらえるように。
両方の気持ちを理解する
Aさんの気持ちも、わかります。
避けてしまうのは、その時の気分や体調かもしれない。
でも、落ち着いたら、やっぱり話したくなる。
そして、相手が話しかけてくれないことに、寂しさを感じる。
Bさんの気持ちも、わかります。
相手が避けているのを感じたら、そっとしてあげたい。
押し付けがましくしたくない。
でも、その優しさが誤解されると、悲しい。
どちらも、悪くないんです。
コミュニケーションのすれ違い
結局、これはコミュニケーションのすれ違いなのだと思います。
言葉にしないと、伝わらない。
「今は一人でいたいから、そっとしておいて」
「落ち着いたら、また話そうね」
そう言えれば、誤解は生まれなかった。
でも、それを言葉にするのは難しい。
だから、私たち支援者が間に入って、通訳する必要があります。
支援者の役割
私たちにできることは、何だろう。
- 両方の気持ちを理解すること
- 一方を責めずに、状況を整理すること
- それぞれに、相手の気持ちを代弁すること
- 少しずつ、自分の行動に気づいてもらうこと
- 言葉にする手伝いをすること
すぐには解決しないかもしれません。
でも、丁寧に関わり続けることで、少しずつ変わっていくかもしれない。
「難しい」と認めること
「難しいですね」
これは、私の正直な気持ちです。
簡単に解決できる問題ではない。
どう関わるのが正解なのか、わからない。
でも、「難しい」と認めることから、始まる気がします。
簡単に答えを出さずに、一緒に悩む。
それも、支援の一つの形なのかもしれません。
見守り続ける
今日も、AさんとBさんの関係を見守っています。
いつか、お互いの気持ちが通じ合う日が来るといいな。
そのために、私は何ができるだろう。
考えながら、寄り添い続けます。
人間関係は、本当に難しい。
でも、だからこそ、支援のしがいがあるのかもしれません。
利用者さん同士の関係を見守りながら、日々「難しいな」と感じています。でも、その難しさに向き合い続けることが、支援者の仕事なのだと思います。




